PTCサーミスタとは

PTCサーミスタはPTC特性(正の温度特性)を持つ抵抗体のことで、Positive(正の) Temperature(温度) Coefficient(係数)Thermal-Resistor(感熱抵抗体)の略です。一般的にはPTCとも呼ばれ、「抵抗急変温度」で急激に抵抗値が増加する特徴を有します。
PTCサーミスタは、強誘電体であるチタン酸バリウム(BaTiO3)へ微量の希土類を添加することでその特性を発現する半導体セラミックスです。

この特徴は、1951年にHeymannらによって発見されて以来多くの研究がなされました。
このPTC特性を活かし、コントローラー不要のヒーターや過電流防止用などに使用されています。

マキシマム・テクノロジーでは、他社と異なる独自の液相法という原料製造方法で、世界トップクラスの低抵抗PTCサーミスタを製造できることから、各種センサーおよび、大パワーのPTCヒーター、自動車用(エンジン部品など)として採用されています。
弊社はお客様のご要望に合わせた各種特性(寸法、抵抗値、抵抗急変温度など)の製品を迅速にご提供いたします。
急激に抵抗値が高くなる抵抗急変温度は10℃から250℃まで変更が可能です。

車載用PTCの用途例

車載用PTC事例

PTC製品の活躍場所

マキシマム・テクノロジーのPTCサーミスタは電子部品として の過電流防止用途以外に、自動温度制御機能を有する定温発熱体としても利用されております。当社の多くの製品はお客様の仕様に基づいて開発・製造された所謂カスタム製品です。

PTCサーミスタの基本特性

PTCサーミスタは主に以下の三つの特性を持っています。

1.抵抗温度特性

PTCサーミスタの温度と抵抗値の関係を表しています。
PTCサーミスタの抵抗値は室温から抵抗急変温度までは通常ほぼ一定ですが、抵抗急変温度を超えると急激に増大します。室温抵抗値と抵抗急変温度は材料組成により変更可能です。
この特性を利用して、熱暴走などによる半導体部品の破損、発火を防ぐため過熱検知用部品として使用されています。

抵抗温度特性グラフ

2.静特性

静特性グラフ

PTCサーミスタへの印加電圧と電流の関係を表しています。
PTCサーミスタが抵抗温度特性の抵抗急変温度(静特性図で最大電流値を示す箇所)に達するまでは、電圧上昇に伴い電流が上昇する抵抗値が一定の領域ですが、 抵抗急変温度を超えると電圧上昇に伴って電流が下降する一定電力の領域となります。
この特性を利用して、ヒーターや過電流保護用部品として使用されています。
ヒーターは一定電力の領域で使用され、環境温度や印加電圧に影響されない自己温度制御型です。
無接点のためバイメタルを使用した際に発生するスイッチングノイズが無く長寿命で、脈動が無い平坦な温度特性を保ちます。
特に、弊社のヒーターは低抵抗であり、小型で高速昇温、高出力が可能です。
過電流保護用部品は、通常時はPTCサーミスタの抵抗値が一定の領域で使用されますが、過電流が流れてPTCサーミスタが抵抗急変温度を超えると抵抗値が増大して回路に流れる電流を減衰させます。
無接点で素早く動作し、繰り返し使用可能なリセッタブルヒューズとして使えます。
特に、弊社の過電流保護用部品は低抵抗であり、小型で迅速な応答特性を持っています。

3.動特性

電圧印加後にPTCサーミスタへ流れる電流値と経過時間の関係を表しています。
電圧を印加した瞬間は抵抗値が低いため、大きい電流が流れますが時間経過とともに自己発熱により抵抗値が増大し、電流を減衰させます。
この特性を利用して、モータ起動用、リレー遅延回路などに使用されています。

動特性グラフ

弊社の技術

低抵抗材料の製造技術

材料製造方法が他社と異なる液相法を用いている事で、世界トップクラスの低い抵抗値を持つ製品を製造しています。また、抵抗値が低いことにより、小型化が可能です。

液相法
液相法
PTC応用製品製造工程
  1. <液相法>PTC材料粉の製造
  2. プレス
  3. 焼成
  4. 電極形成
  5. 各種組立
  6. 検査・出荷

という流れになります。

PTCサーミスタを活用した製品

過電流保護用サーミスタ

PTCヒーター

リチウムイオン電池用ヒーター

PTCサーミスタが活用する場面

PTCサーミスタはその特異な抵抗ー温度により、回路基板のトラブルによる過電流を防止したり、自己制御形のヒーターとして各種分野で利用されております。無接点の為、雑音の発生がなく、寿命特性が優れています。固体素子なので耐振動性・衝撃性にも優れています。

家電製品

家電用途では、エアコン、扇風機、掃除機、冷蔵庫などの小型モーターの起動用に、またモーターロック時に発生する過電流(ロック電流)を減衰させ、モーターの熱損を防ぐ働きにも利用されています。OA機器の冷却にかかせないDCブラシレスファンの信頼性を高めることにも貢献しています。
また、PTCサーミスタの自己温度制御特性を利用し、ヘアードライヤーなどの家電製品の発熱体としても広く利用されています。従来のバイメタル制御と違い、連続的に電力をコトロールするので、脈動のない温度特性と、熱負荷の急激な変化に素早く応答する安全性を有しています。携帯電話にも内蔵され、回路異常に対応する部品として使用されています。

産業用機器

熱源を持たないEV(車載)のエアコン用ヒーターとして、また寒冷時にフル充電するためのリチウムイオン電池用加温ヒーターとして、当社オリジナル技術によるPTCヒーターが利用されています。
また、内燃機関用では当社独自の電極構造を有したブローバイガス還元装置用CCV(クランク・ケース・ベンチレーション・システム)ヒーターが長年に渡りエンジンメーカーでご愛顧いただいています。

航空・宇宙産業

固体素子であるため機械的振動・衝撃に耐えて、また不燃性であるPTCサーミスタは航空機や宇宙で使用されています。
無接点動作で自己温度制御を行うので、小型かつ長寿命で、雑音の発生が無いので、高信頼性が要求される分野で高い評価を得ています。

リチウムイオン電池

様々な分野で利用されているリチウムイオン電池は大容量の電力を蓄えているので、負荷の短絡などのよる過大電流で機器の発火・爆発が懸念されます。PTCサーミスタはこの過大電流を検出し、電流を減衰させることで他の電子部品やプリント基板の熱損を防ぎます。また、リチウムイオン電池の寒冷時のフル充電用に自己温度制御機能を有するPTCヒーターが活躍しています。PTCヒータは電池を適切な温度まで加温し、維持します。電池が発火する危険な60℃以上にはなりません。

医療機器

素子自体が温度調整の働きを持っているので、小型軽量で配線などの取扱いが容易です。また、ニクロム線ヒーターに比べ寿命が長く故障が少ないので、医療器などの高信頼性が必要な機器に最適です。

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