PTCヒーターはPTCサーミスタの特性を利用した加熱用部品です。
PTCサーミスタは電気を流すことで自己発熱します。さらに一定の温度まで上昇すると、その温度を保つことができます。
このような特性を活用し、加熱用部品としたのがPTCヒーターです。
PTCサーミスタの特性を活用していることで、一般的な加熱用部品に比べて、「省エネ」「簡単制御」「安全」なのがPTCヒーターといえます。
PTCヒーターと似た用途で使用される加熱用部品として、ニクロム線ヒーターがあります。
ニクロム線ヒーターと比べ、PTCヒーターは温度制御装置も必要ありませんし(後述)、温めたい温度に達するとそれ以上電力を消費しませんので、エネルギーの節約につながります。
またPTCヒーターはニクロム線ヒーターと比べ耐久性も高いため、長期間の利用が可能となります。
エネルギー消費を抑えて加熱したい製品には、PTCヒーターがおすすめです。
PTCサーミスタの特性を利用したPTCヒーターでは、温度を保つのに複雑な温度制御装置は必要ありません。
温度が上昇するにつれて抵抗値が上昇するため、一定の温度以上では電力を通さない、つまり一定温度以上には上がらず、温度をキープすることが可能です。
このような制御はPTCサーミスタが持つ特性ですので、電力のオン/オフといった制御は全く必要ありません。
そのため、切り替え時に発生するスイッチングノイズも発生しないということになります。
単純に部品を組み込むだけで加熱したい、製品の他の部分に影響を与えたくない、といった要望にもPTCヒーターであれば応えることが可能です。
PTCヒーターはPTCサーミスタの特性を利用しているため、一定の温度以上は電力を通さなくなります。
目標としている温度に達するとそれ以上のエネルギーの供給がされなくなるため、想定していた温度よりも高くなるということはありません。
複雑な温度制御をしなくても異常過熱状態にならず、安全というのがPTCヒーターの特徴です。
ヒューズを使って、異常電流対策・・・といったことは必要ありません。製品の安全性を高めるといった用途にもPTCヒーターは活用できます。
マキシマムテクノロジーのPTCヒーターは、小型、かつ設定できる温度域が広いのが特徴です。
小型であるため、多くの製品に組み込むことが可能です。
また、設定可能な温度域は10℃~250℃と幅広く、様々な用途で活用することが可能です。
PTCの自動温度制御機能を抵抗・温度特性(図1)を用いて説明します。
いま、定常状態において、A点で動作しているとします。
この状況で、印加電圧や周囲温度が上昇するとPTCの温度が上昇し動作点がB点に移行しますが、温度上昇によってPTCの抵抗が増加し電流が小さくなります。従って元のA点
に戻るように働きます。
また、印加電圧や周囲温度が下がった場合、PTCの温度が低下し動作点がC点に移行しますが、温度低下によってPTCの抵抗が下がり、電流が大きくなって元のA点に戻るように働きます。このようなPTCの印加電圧や周囲温度が変化しても、常に一定の温度に保つように働きます。
また、PTCの自動温度制御機能を電圧・電流特性(図2)にて説明します。
PTCは、ある電圧(V-Iのピーク)以上でほぼ定電力を示します。
従って、V-Iのピークの電圧以上で、PTCの印加電圧が変わっても、電力はほぼ一定のため、安定時の温度はほとんど変わりません。また周囲温度(Ta)が変わった場合、PTCの電圧・電流特性は以下のように変化します。即ち、周囲温度(Ta)が高くなると定電力線がℓからℓ1に、また周囲温度(Ta)が低くなると、
ℓからℓ2に移行した線に沿った特性に変化します。
従って、印加電圧(E)のときA点で安定していたものは、周囲温度(Ta)が上がると、B点に移行し電力が下がり、周囲温度(Ta)が下がるとC点に移行して電力が大きくなるため常に一定に保つように働きます。
以上、抵抗・温度特性、電圧・電流特性で説明したようにPTCは印加電圧や周囲温度の変化に対し、常に一定の温度に保つように働く、すぐれた自己温度制御機能を有しています。
なお、PTCの温度変化要因には、前のページの印加電圧周囲温度の変化の他、放熱板などの負荷の大きさもあります。
負荷の大きさについては、ほぼ周囲温度と同様に考えることができます。
負荷が大きくなる場合、周囲温度が低くなった場合と同様にまた負荷が小さくなる場合、周囲温度が高くなった場合と同じ方向で動作します。
図3に、PTCの周囲温度と電流の関係
図4に、PTCの負荷の大きさと電力の関係を示します。
図5に、Aと、これより常温抵抗(R25℃)の小さいBのPTCの電流・時間特性を示します。
常温抵抗(R25℃)の小さいBのPTCは突入電流は大きいが短い時間に減衰します。
また常温抵抗の大きいAのPTCは、突入電流は小さいが減衰するまでの時間が長くこのため、tA以下では常温特性の低いBのPTCの方が昇温特性は早くなりますが、例えばtCの点でみた場合トータルエネルギーはほぼ同じで、全体的に昇温特性はほとんど変わらないといえます。
なお図5の電流・時間特性において周囲温度が低くなったり負荷が大きくなると突入電流の特性(減衰)の時間が長くなる上安定電流も大きくなります。
逆に周囲温度が高くなったり、負荷が小さくなると 突入電流の特続時間が短くなり、安定電流は小さくなります。
従って、負荷や周囲温度が変わった場合も昇温特性は変化します。